2010年12月31日金曜日

ステゴサウルス Stegosaurus armatus

ステゴサウルス 
Stegosaurus armatus
作品サイズ 40cm
縮尺 1/20

 ガレージキット用や一般商品用の原型等で意外に数を造っている恐竜ですが、個人作品としては約14年振りになりました。ステゴについては、こちらも見て頂くとして、今回もまた微妙に違う姿勢での復元にしています。背中の板の数、大きさ、形、そして並び方はもちろん、背中のカーブや前肢の位置等、派手は特徴から地味な部分までいろいろと考慮すると、毎回違ったイメージの作品になります。
  喉を細かい骨片がビッシリと並んで護っていた、という説が有り、その復元に基づいた骨格展示も国立科学博物館等で見る事が出来ます。イラスト等では、その骨片の存在を示す為か、横から見たシルエットで喉を下側に大きめに表現した物がありますが、個人的には立体的に見てそれはちょっと無理があるのでは無いかな、と考え、今回の作品では喉と特に大きく表現していませんし、また骨片自体も皮膚に覆われて特に目立ちはしないという事にしています。ここらへんは、仕事では無い、個人作品だからこそ出来るお遊びというか、冒険ですね。


レプトネクテス Leptonectes tenuirostris

レプトネクテス 
Leptonectes tenuirostris
作品サイズ 30cm
縮尺 1/10

 東京・上野の国立科学博物館に展示されてる骨格をベースにしています。初めて骨格標本を見た時には「レプトネクテスって初めて聞くけど、誰よ?」だったんですが、『Sea Dragons』(Richard Ellis著)によると、レプトプテリギウスの名前がレプトネクテスに変わったようで。レプトプテリギウスなら名前くらいは分かります。
 体表はイルカのような滑らかな表面ではなく、爬虫類らしさを強調するため、ザラついた感じにしています。縮尺を考えると、ちょっとオーバーな表現ではありますが。


 (レプトネクテス全身骨格 東京・国立科学博物館にて撮影)

プレシオサウルス Plesiosaurus

プレシオサウルス 
Plesiosaurus
作品サイズ 40cm
縮尺 1/10

 首長竜といえば、その名の通り長い首が目立ちますが、実は前肢・後肢共にオール状 になっているのがクセもの。ペンギン・ウミガメは首長竜と違い、前肢だけが大きく後肢は小さいので、首長竜の泳ぎ方を考える時にあまり参考に出来ないんで すね。前後を一緒に上下させるのか、互い違いなのか、の議論があり、さらに泳ぐにはどちらかというと不便そうな長い首が加わるので、一筋縄ではいきませ ん。以前タラソメドンを造った時は、前後互い違い説を採用しましたが、今回は去年恐竜の楽園でも紹介された前後同時説で造っています。
 
  胴体に対する首の長さの比率がプレシオサウルス程度なら、まだそこその速度で機敏に泳いでいたと思うのですが、全長10m以上で、かつその全長の半分近く を首が締めるエラスモサウルスやタラソメドン等になると、とても素早く泳げたとは思えません。現生の海洋動物でも、高速で泳ぐ動物は首が短いですから。首長竜は、ウミガメ、魚竜、モササウルス等の他の中生代の海棲爬虫類と比 べると、似た動物が現在存在しない、という点で特に不思議な動物です。あえて探すなら、ヘビクビカメ等の首の長いカメなんですが、今度はサイズが違いすぎ ます。「恐竜や古生物の生きている姿を見ちゃうと、いろいろ考えて造形する楽しさが無くなってしまうから見たく無い」というのが持論の私ですが、首長竜だ けは泳いでいる姿見てみたい気もします。

フタバサウルス Futabasaurus suzukii

フタバサウルス 
Futabasaurus suzukii
作品サイズ 40cm
縮尺 1/20


 プリオサウルスと共に07年、アメリカ・オクラホマ州サムノーブル自然史博物館で開催された『恐竜アートコンテスト』プロフェッショナル部門でHornable mention(選外佳作)になった作品です。
 フタバサウルスは、以前はフタバスズキリュウと呼ばれていた、『のび太の恐竜』のピー助のモデルとなった首長竜です。首長竜は恐竜ではないのですが、『のび太の首長竜』では、一般には伝わりにくかったのかも知れません。 作品展等で首長竜を展示していると、かなりの数の方が「あ、ピー助!」と声を上げます、それなら、ピー助そのものであるフタバサウルスは、まさにピー助カラーにしてしまえ、という事でこのカラーリングになりました。
 この作品の画像を真鍋真氏、ケネス・カーペンター氏の両氏に見て頂いた所、御二人共に頭部形状について指摘されました。骨格標本には歪みがあり、それを補正して造る必要があったようです。まだまだ勉強が足りませんね。

プリオサウルス Pliosaurus 

プリオサウルス
Pliosaurus
作品サイズ 30cm
縮尺  1/20


 フタバサウルスと共に、07年アメリカ・オクラホマ州サムノーブル自然史博物館で開催された『恐竜アートコンテスト』プロフェッショナル部門でHornable mention(選外佳作)になった作品です。
  福島・いわき石炭化石館に展示されている標本をベースにしています。前後のヒレの動かし方(プレシオサウルスの項参照)に関しては、前後一緒に上下させるタイプにしました。同時期に造ったフタバサウルスは前後別のタイプです。空間構成的には、前後別のタイプのほうがキマるように思いますね。

 オマケの絶滅サメ・プロトスピナクス。資料が少なくオマケとはいえ製作には苦労しました。

ズンガリプテルス Dsungaripterus weii

ズンガリプテルス 
Dsungaripterus weii
作品サイズ 高さ15cm
縮尺 1/5
















 

翼竜の足跡と言われている化石を元に地上歩行の姿を再現してみようと試みた作品。北九州市立自然史博物館のリニューアル以前から展示されているズンガルプテルスの全身骨格が、件の足跡化石と一致する地上姿勢で復元されているので、それを参考にしています。足跡化石は、時代・場所がズンガリプテルスとは違うので、組み合わせとしてはちょっと無理があるかも知れませんが。

アンキロサウルス Ankylosaurus magniventris

アンキロサウルス 
Ankylosaurus magniventris
作品サイズ  35cm
縮尺 1/20

  エウオプロケファルスの項で書いた通り、アンキロはヨロイ竜の代表として知名度が高い割に資料が少なく、造形しにくい恐竜だったのですが、古生物学者ケネス・カーペンター氏によるアンキロサウルスの論文を、御本人より頂いたのをきっかけに製作しました。エウオプロケファルスをカーペンター氏に御譲りして、その穴埋めとしてのアンキロの製作でもあったので、ポーズやベースの構成がエウプロケファルスと同じになっています。



エウオプロケファルス Euoplocephalus tutus

エウオプロケファルス 
Euoplocephalus tutus
作品サイズ  35cm
縮尺 1/20

 ヨロイ竜、といえばアンキロサウルスが有名ですが、そのアンキロの組み立て骨格というのが本やネット上で見た事がなく、造りたくても資料不足。そこで、日本でも全身組み立て骨格を見る事が出来るエウオプロケファルスを製作しました。
 上から見ると、腹部の横の広がりが良くわかります。そして、その腹部の横幅に対して、前肢と後肢の左右幅が以外に狭いのも面白いです。
   ケネス・カーペンター氏よ りメールを頂き、サイトにアップしている作品に関してお褒めの言葉を頂きました。カーペンター博士と言えばヨロイ竜が専門。そこで、まだサイトにアップし ていなかったこのエウオプロの画像を送った所「It is truly very remarkable and the scientifically most accurate in the world.」との感想が。訳すと「とても優れていて、世界でも一番科学的に正確だ」といった所でしょうか。とにかく非常に高く評価して頂いたようです。それ以降も、カーペンター氏とはメールや学会等で交流が続いています。

パキケファロサウルス Pachycephalosaurus wyomingensis

パキケファロサウルス 
Pachycephalosaurus wyomingensis
作品サイズ 35cm
縮尺 1/15



 ドーム状の石頭ですが、最近では武器に使うのでは無く装飾だった、という説が主流のようです。有名な「パキケファ ロ同士がお互いに助走を付けて頭をぶつけあう」説に関しては、頭部や首の構造がどうの、という以前に、眼が頭部の横に付いていて正面の視界がそれほど良い とも思えない動物が、頭頂同士をピンポイントでぶつける事が非常に困難なのではないかと。ですが、ただの装飾というのも面白く無いな、と思い、敵やライバ ルのオスと争う時は、横に頭を振って牽制・攻撃する、という事にしてみました。後頭部のトゲには横方向に生えている物もあるので、正面から相手にぶつかる よりも殺傷力ありそうです。
  パキケファロといえば、やはり頭部が目立ちますが、胴体や骨盤の形、全体のバランス等、地味ですが結構特徴の多く、造っていて楽しい恐竜でした。


・この作品は2014年10月〜2015年6月まで国立科学博物館の展示に使用されました>詳細

2010年12月30日木曜日

トリケラトプス(2010 ) Triceratops horridus

トリケラトプス(2010 )
Triceratops horridus
作品サイズ 40cm
縮尺 1/20
















トリケラトプス(赤ちゃん)
作品サイズ 5cm


 トリケラトプス(子供)
作品サイズ 11cm
 「ほんとのおおきさ恐竜博」(学研)に
頭部が実物大に拡大されて掲載されています。



トリケラトプスに関しては、様々な成長段階での頭骨が報告されています。それらの資料を基に、これらの作品も製作しています。



主に参考にした資料・書籍
・Goodwin, M. B., Clemens, W. A., Horner, J. R., and Padian, K. (2006). "The smallest known Triceratops skull: new observations on ceratopsid cranial anatomy and ontogeny." .
Journal of Vertebrate Paleontology 26 (1): 103.

・Horner JR, Goodwin MB."Major cranial changes during Triceratops ontogeny."Proc Biol Sci. 2006 Nov 7;273(1602):2757-61.

・Fujiwara, S.-I. (2009). "A Reevaluation of the manuos structure in Triceratops (Ceratopsia: Ceratopsidae)." Journal of Vertebrate Paleontology, 29(4): 1136-1147.

・Hieronymus TL, Witmer LM, Tanke DH, Currie PJ.(2009)."The facial integument of centrosaurine ceratopsids: morphological and histological correlates of novel skin structures."
The Anatomical record 2009, vol. 292, no9, pp. 1370-1396

・藤原慎一「復元研究最前線」(1/35 恐竜骨格モデルシリーズ・トリケラトプス)

(Hirokazu Tokugawa  恐竜・古生物立体造形ギャラリー)

スティラコサウルス Styracosaurus albertensis

スティラコサウルス 
Styracosaurus albertensis
作品サイズ 30cm
縮尺 1/20

トリケラトプス(2006)  Triceratops horridus

トリケラトプス(2006) 
Triceratops horridus
作品サイズ 30cm
縮尺 1/20


 個人的に気に入っている作品の一つ。上野の国立科学博物館に展示されているトリケラトプス、愛称レイモンドをベースに製作しました。前肢の運びは、角竜研究者の方に伺った話を元に決定しています。

エイニオサウルス Einiosaurus procurvicornis

エイニオサウルス 
Einiosaurus procurvicornis
作品サイズ 30cm
縮尺 1/20


 鼻上の角の独特の曲がり具合のせいか、知名度の割にイラスト・立体の題材にされる事の多い角竜です。それだけに化石資料 もあるんだろうな、と思って検索した所、ネット上で見つかったのは胡散臭げな頭骨のみ。頭はそれを参考にするとして、胴体は近縁種のパキリノサウルス等の 物を拝借しました。「それなら他の角竜を造れば良いんじゃ、、」と言われそうですが、やっぱりこの角の魅力には逆らえなかった訳です。
 前肢の第4、5指の爪は塗り忘れではありませんので。他の角竜で、その部分の爪が化石として出ていないので、それに従い第4、5指に関しては爪が無い表現にしています  

 トリケラトプスを始め角竜全般に言える事ですが、頭骨前半分(上下の顎の部分)の左右幅は意外なほどに薄いです。この薄い頭骨が土台では、いくら大きな角を持っていても、それを武器として振り回すのは自分の頭部へのダメージも大きいのでは。角竜同士がお互いの角を至近距離でぶつけ合う程度ならともかく、走って勢いをつけてアタック、というのは無理かな、と思います。姿や特徴が似ているからと言って、頑丈な頭骨を持ち、折れてもまた伸びてくる角を持つサイを参考にする事には疑問あります。ギャロップする角竜、カッコ良いんですけどね〜。(05.12.20) 

サウロロフス Saurolophus osborni

サウロロフス 
Saurolophus osborni
作品サイズ 40cm
縮尺 1/20

 サイトに更新したのは05年5月ですが、作品自体は04年7月に完成。サウロロフスといえばモンゴルの恐竜というイメー ジが強いですが、カナダ・アルバータからも別 の種が発見されており、モンゴルで発見されたものにはangustirostris、カナダのものにはosborniという種名が付けられています。この 作品ではosborniを製作。頭の形が微妙に違うのですが、それは種の違いによる差というより、個体差や化石の歪みの影響のほうが大きいのではないか な、とも思っています。また、実際に骨格標本を見る事が多いのも、資料が豊富なのもangustirostrisですので、osborniではっきりしな い所はangustirostrisを参考にしています。(2005.5.22)